《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
 少し勝気な表情や口調も、正にジュリアンの理想の女の子像を体現したかの様な容姿だった。

「ああ、ごめん。ちゃんと紹介するよ! メルテはマルティーン帝国の第一皇…」

「フン。ボクはマルティーン帝国の第一皇子、メルティオール・M・フィールだ」

「で、こっちは俺の幼なじみのジュリ!」

「か、かわいぃ……じゃなくて! ジュリアン・アダンソンと申します!! よろしくお願いします!!」

 透き通った薄水色の瞳にじぃっと見つめられ、照れたジュリアンはメルティオールに向かって勢いよくお辞儀をした。

「オイ、オマエ! さっきカラずっとカン違いしているみたいだケド、皇子って言ったのチャンと聞いてた? ボクは男だからな!」

「そっかぁ! メルティオール様は皇子……って、ん? んん?? え? 皇子!? 男!!?!」

 目の前の美少女、いや美少年メルティオールは腰に手を当て顔をツンと反らしている。

「あはは、実は俺も初めて会った時は間違えたんだ。でもメルテはかわいいから仕方ないよね」

「う、嘘だろ…? だってどう見たって……」

「チョット、アーサ! 男に向かってカワイイとはナンダ!! オマエの方コソ女みたいなカオのクセに!!」

「悪かったよ! お互い気にしてるんだよな。だからさっきも、より男らしくなる為にはどうしたらいいのかって話で盛り上がってたんだ」

「そ、そうなんだ……」

 見事に砕け散ったつかの間の恋心に肩を落とす。メルティオールが男だと言う事実にまだ気持ちが追いつかない。

「フン! 確かにコノ中ではオマエが一番男っポイな! オイ、ドウしたらそんなに腕が太くなるんだ?」

 メルティオールはそう言いながら隣に並んで自分の白くて細い腕と見比べると、ジュリアンの腕や胸板にぺたぺたと触り始める。

「ひえっ!?」

「かっこいいだろ? ジュリは俺の自慢の幼なじみなんだ!」

「ヘェ……カラダも大きいナ。ホントにボクと同じ歳なのか? 普段ナニ食べてるんだ? 参考に訊いてやる!」

 身体が密着している上、更に整った顔を近づけられ質問攻めされる。思わず反動で身を引いた。

「っちょ、何これ、やめて……。何か俺ヘンな気持ちになりそう…」

「え? 何で?」
「ナゼだ?」

 二人とも至って真顔だ。特にラインアーサはいつもの様に純真な眼差しで見つめてくるから達が悪い。

「か、かんべんしてくれ……。もう」
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