《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「───イリア、今日の髪型すごく素敵だ。イリアの髪色に良く映えて似合ってるよ」

「まあ。ありがとうブラッド。ブラッドこそ、また背が伸びた? それにブラッドは何時も素敵よ。うふふ」

「イリアには敵わないよ」

「もう、ブラッドったら……」

 何やら中庭は、ブラッドフォードとイリアーナの二人だけの空間かと錯覚する程甘い雰囲気で満たされていた。
 しかしそんな二人に気づいて駆け出そうとするラインアーサを咄嗟に引き止めた。

「っ!! べ、別の場所を探そうぜ!」

「先客か……仕方ないナ」

「えー? 何で? 俺もブラッド兄様とおしゃべりしたかったのに」

 ジュリアンとメルティオールが踵を返す中、ラインアーサだけが一人困惑気味だ。

「何でってお二人の邪魔出来ないだろ!」

「アーサ、クウキ読みなヨ」

「むぅ、わかった。じゃあ中庭が駄目なら横庭のあそこに行く?」

「あー、あそこなら心配ないな……はぁ」

「ジュリどうかした?」

「いや? 早く行こうぜ」

 横庭には以前ラインアーサと二人で作った秘密基地がある。本当は二人だけの特別な場所だったのだがこの際仕方が無い。

 早速、王宮の外に出て横庭へ回り込む。
 中庭も手入れが整っていて素晴らしいが、王宮の横庭は自然の小川が流れていてとても美しい。小川の両岸には多種多様の花々が咲き乱れており、柔らかく吹く風と小鳥の囀りに癒される。

 メルティオールが小川に架かる石橋の上で立ち止まった。

「ッ!! 川だ……スゴい」

「いい所でしょ? ここ俺のお気に入りなんだ!」

「川が流てるの、ハジメテ見た……」

「えっ?!」「えっ??」

 ジュリアンとラインアーサの声が同時に重なる。

「ボクの国では水は殆ど凍てついてるカラ」

「へえ!」

「モチロン城の中には噴水や水路は沢山ある。城下町の水の都に行けばいくらでも水はあるケド、こうやって自然のナカを流れる川はハジメテだ」

「魚もいるよ! ほらあそこ」

「ホントダ! スゴいな」

 ラインアーサと石橋から身を乗り出し小川を眺めるメルティオールの横顔は、とても嬉しそうに輝いていた。

「……秘密基地はこっちです。アーサも行くぞ」

 何となく俯きながら石橋を渡り、王宮を囲む深い森の中へと足早に入って行く。森と言ってもある程度の整備はされている為歩き安い。
 とある大きな樹の前でジュリアンは立ち止まった。
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