《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
君の笑顔
───アーサ。
俺はただお前の側に居ること。それだけが俺の人生に与えられた役割だと思ってた。でもそうじゃあないって教えてくれたのもお前で……。
でもやっぱり、それでもお前の傍で仕えるのが俺の役割なんじゃあないかって思うんだ。
お前は何時も忠義に縛られる事ないって言ってたけど……。そんなんじゃあなくて、要はお前が危なっかしいからほっとけないって事だよ。
まあ何時か……。何時になるかはわからないけど、お前が本当に困ってる時は絶対隣に居てやるから今のうちにお互い力付けとこうぜ!
毎日のきつい稽古も、難しい技の練習もお前に負けたくないから真面目にやってる。
アーサも毎日鍛錬しろよな。サボるなよ?
それから……
──────
───
「──っクロキ先輩ちょっとたんま!」
「なんだ、もう根を上げたのか? アダンソン隊長の息子だと聞いて僅かに期待していたが、見当違いだったか……」
国営警備隊の訓練生の寄宿舎にて同室になったクロキはジュリアンより四つ程歳上の若手だが、訓練生の中では既に上位の実力派だ。しかし自身には勿論のこと、他人にも厳しすぎる為か孤立する程周りからは敬遠されていた。
そんなクロキと共に早速朝の鍛錬に挑んだものの、あまりにもキツい鍛錬課程に初日から弱音を吐きそうになっていた。
それでもクロキの挑発に乗ったジュリアンは達者に弁解を始める。
「根を上げるだなんてとんでもない! ただ俺はクロキ先輩の事をもっと知りたいなぁ、って……ほら、同室になったのも何かの縁ですし?」
「……知って何になる?」
クロキは黒く艶やかな前髪の隙間から赤い瞳を光らせ、ジュリアンを見下す様に威圧する。
「な、何って、仲良くなる為にはまずお互いの…」
「オレは誰とも馴れ合うつもりは無い。同室か。お前もどうせ数日で此処から去るのがオチだろう……。今回は何日もつのやら」
「去るって…? 俺がですか?」
「……無駄話は終いだ。貴重な時間をこんな事に使ってる暇があったら一つでも技を磨け」
「はい!」
会話をしながらも呼吸を整えたジュリアンは気合いを入れて勢い良く返事をすると、クロキの鬼のような鍛錬と扱きに何とか食らいついていった。
初日は身体がバラバラになるかと思う程堪えたが何日かするとそれにも順応し始め、クロキの朝練には余裕でついていける様になっていた。