《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
その日も自主鍛錬を終えて食事や風呂を済ませ既に灯りの落とされた自室へ戻ってきた。
暗い中音を立てない様に床に着こうとした所で突然クロキが言葉を発した。
「……お前。何を焦っている?」
「わっ! クロキ先輩?! 起こしてしまいましたか? すみません!」
「いや。起きていた」
「そうなんですか? じゃあ明日も早いのでもう休みましょう。おやすみなさ…」
「待て。オレの質問に答えていない。何にそれほど焦っている、と聞いているんだが」
「え。焦ってるって俺が、ですか?」
「そうだ」
暗闇の中クロキが身を起こした気配がする。不意に部屋の照明に灯りが灯り眩しさに瞳を細めた。
「クロキ先輩、もう遅いですから話なら明日に…」
「遅くまで部屋に戻らなかったのはお前だろう? ……もはやお前が此処から去るなどとは思ってはいない。しかし無理に飛ばしすぎたからといって良いものが身につく訳では無い」
「っ!」
「昔、オレがアダンソン隊長から頂いた言葉だ……」
「……」
「この言葉の意味、お前にも分かるな?」
「はい。……っでも俺、強くならないといけないんです! 早く強くなってあいつの事守らないと…!」
「詰め込みすぎても強くはなれないと言っているんだ」
クロキに図星を突かれ焦りが増す。ジュリアンはついカッとなって大きな声を張り上げた。
「分かってますよ!! でもっ、今の俺に出来ることはこれしか無いんです!」
「……そんな事はない。手を見せろ」
「へ? 手ですか?」
ジュリアンは両手を開きクロキに向けた。
「豆が出来て潰れているな」
「これくらい、此処に居る訓練生は殆ど…っ痛!」
「塗っておけ、早く良くなる」
クロキはジュリアンの掌に軟膏を塗ると包帯を巻き始めた。
「せ、先輩! そんな、俺大丈夫ですから!!」
「見たところ剣の振り方に変な癖はないな。しかしお前に足りない物がある」
「足りないもの…?」
「自己管理だ。強くなる為一番に必要なのは無駄に鍛錬を重ねることではなく、自分の身体を労り整える事。最適に動ける身体があってこそ強さに近づける」
自分の身体を労ると言うこと自体がジュリアンの頭には無かった。
ふと、今まではどうして来たのだろうと思い返す。そう言えば体調不良や怪我等を負った時はいくら大丈夫だと断ってもラインアーサが癒しの風で治してくれていたのだ。
暗い中音を立てない様に床に着こうとした所で突然クロキが言葉を発した。
「……お前。何を焦っている?」
「わっ! クロキ先輩?! 起こしてしまいましたか? すみません!」
「いや。起きていた」
「そうなんですか? じゃあ明日も早いのでもう休みましょう。おやすみなさ…」
「待て。オレの質問に答えていない。何にそれほど焦っている、と聞いているんだが」
「え。焦ってるって俺が、ですか?」
「そうだ」
暗闇の中クロキが身を起こした気配がする。不意に部屋の照明に灯りが灯り眩しさに瞳を細めた。
「クロキ先輩、もう遅いですから話なら明日に…」
「遅くまで部屋に戻らなかったのはお前だろう? ……もはやお前が此処から去るなどとは思ってはいない。しかし無理に飛ばしすぎたからといって良いものが身につく訳では無い」
「っ!」
「昔、オレがアダンソン隊長から頂いた言葉だ……」
「……」
「この言葉の意味、お前にも分かるな?」
「はい。……っでも俺、強くならないといけないんです! 早く強くなってあいつの事守らないと…!」
「詰め込みすぎても強くはなれないと言っているんだ」
クロキに図星を突かれ焦りが増す。ジュリアンはついカッとなって大きな声を張り上げた。
「分かってますよ!! でもっ、今の俺に出来ることはこれしか無いんです!」
「……そんな事はない。手を見せろ」
「へ? 手ですか?」
ジュリアンは両手を開きクロキに向けた。
「豆が出来て潰れているな」
「これくらい、此処に居る訓練生は殆ど…っ痛!」
「塗っておけ、早く良くなる」
クロキはジュリアンの掌に軟膏を塗ると包帯を巻き始めた。
「せ、先輩! そんな、俺大丈夫ですから!!」
「見たところ剣の振り方に変な癖はないな。しかしお前に足りない物がある」
「足りないもの…?」
「自己管理だ。強くなる為一番に必要なのは無駄に鍛錬を重ねることではなく、自分の身体を労り整える事。最適に動ける身体があってこそ強さに近づける」
自分の身体を労ると言うこと自体がジュリアンの頭には無かった。
ふと、今まではどうして来たのだろうと思い返す。そう言えば体調不良や怪我等を負った時はいくら大丈夫だと断ってもラインアーサが癒しの風で治してくれていたのだ。