《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
自ら体調の管理をせずとも、ラインアーサに守られていたと言う事実に今更ながら気付かされ情けなくなる。
「っ…確かに……でも俺、どうやったら良いか分からなくて……」
「……仕方ない。オレが効率の良い訓練行程を組んでやる」
「良いんですか?!」
「同室の誼みだ。それにこれ以上オレの貴重な睡眠時間を妨げられたく無いからな。だから明日からはちゃんと休め」
「ありがとうございます!! ……でも、先輩は何でそんなに俺の事気にかけてくれるんですか?」
「お前を見ていると昔の自分を見ている様で腹が立つからだ」
「へえ、そうなんです? へへへ」
「何がおかしい」
いつも冷静沈着で近寄り難いクロキにもそんな時期があったのかと思うと急に身近に感じて嬉しくなった。
「いーえ、何でもありません。あ、先輩には何かお礼をしますね!」
「礼などいらん」
「いや、そういう訳には行きませんよ! 手の治療だってほんとうに感謝です」
「……ならあれでいい。お前が淹れた茉莉花の茶。たまにでいい、あれを頼む」
「はい! 了解しました!」
「さあ、もう休むぞ」
そう言うとクロキは照明を落とした。再び部屋に暗闇と静寂が訪れる。床に就いたものの何となく気もそぞろで目が冴えてしまった。
「クロキ先輩、起きてますか?」
「……」
返事はないが眠っている気配でもない。
「……先輩の名前、教えてください。先輩って名簿のサインとかもほとんどクロキの姓で書いてますよね。でもこの間先輩が落とした懐中時計を拾った時にチラッと裏に名前が掘ってあったのが見えて…」
「見たのか…?」
「あ、でも読めませんでした。この国の文字じゃあないですよね?」
「……オレは自分の名前が好きではないんだ。聞きたくもないし、呼ばれたくもない」
「そう、なんですか。何か理由があるんですよね…。でも名前ってその人を表すって言うじゃあないですか。いつか教えてくださいね」
「全く…。お前は本当に強引だな」
「そんな事ないですって」
呆れた様なため息を漏らしたクロキだが、次にしっかりとした発音で名を名乗った。
「瑠璃だ」
「っ…凄くいい響きですね。教えてくれてありがとうございます」
「……この名で呼ぶ事は許可しない。もう寝ろ」
「了解です。今度こそおやすみなさい…」
ジュリアンは大きく息を吸い込むとゆっくり瞳を閉じた。
「っ…確かに……でも俺、どうやったら良いか分からなくて……」
「……仕方ない。オレが効率の良い訓練行程を組んでやる」
「良いんですか?!」
「同室の誼みだ。それにこれ以上オレの貴重な睡眠時間を妨げられたく無いからな。だから明日からはちゃんと休め」
「ありがとうございます!! ……でも、先輩は何でそんなに俺の事気にかけてくれるんですか?」
「お前を見ていると昔の自分を見ている様で腹が立つからだ」
「へえ、そうなんです? へへへ」
「何がおかしい」
いつも冷静沈着で近寄り難いクロキにもそんな時期があったのかと思うと急に身近に感じて嬉しくなった。
「いーえ、何でもありません。あ、先輩には何かお礼をしますね!」
「礼などいらん」
「いや、そういう訳には行きませんよ! 手の治療だってほんとうに感謝です」
「……ならあれでいい。お前が淹れた茉莉花の茶。たまにでいい、あれを頼む」
「はい! 了解しました!」
「さあ、もう休むぞ」
そう言うとクロキは照明を落とした。再び部屋に暗闇と静寂が訪れる。床に就いたものの何となく気もそぞろで目が冴えてしまった。
「クロキ先輩、起きてますか?」
「……」
返事はないが眠っている気配でもない。
「……先輩の名前、教えてください。先輩って名簿のサインとかもほとんどクロキの姓で書いてますよね。でもこの間先輩が落とした懐中時計を拾った時にチラッと裏に名前が掘ってあったのが見えて…」
「見たのか…?」
「あ、でも読めませんでした。この国の文字じゃあないですよね?」
「……オレは自分の名前が好きではないんだ。聞きたくもないし、呼ばれたくもない」
「そう、なんですか。何か理由があるんですよね…。でも名前ってその人を表すって言うじゃあないですか。いつか教えてくださいね」
「全く…。お前は本当に強引だな」
「そんな事ないですって」
呆れた様なため息を漏らしたクロキだが、次にしっかりとした発音で名を名乗った。
「瑠璃だ」
「っ…凄くいい響きですね。教えてくれてありがとうございます」
「……この名で呼ぶ事は許可しない。もう寝ろ」
「了解です。今度こそおやすみなさい…」
ジュリアンは大きく息を吸い込むとゆっくり瞳を閉じた。