《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「……あれ、、クロキ先輩…? え、もう朝です?」
「いや、まだ陽が落ちたばかりだが起きたなら今直ぐに着替えろ。緊急事態らしい、訓練場に整列だ」
「整列? 緊急事態って、何かあったんですか?」
「詳細はまだ不明だが、しかし…」
クロキは今まで周囲に見せた事の無い不安気な表情で俯いた。
「先輩…?」
「いや、何か嫌な予感がする……」
クロキの予感は的中した。
訓練場に着くと既に集まっていた訓練生達が何やらざわついている。
そんな中ジュリアンの耳に一早く聞こえた言葉は〝内乱〟という二文字だった。
しかもルゥアンダ帝国とマルティーン帝国が手を結び、内乱陰謀を企てたと言う憶測だけの情報が飛び交っている。瞬間。例の二人がジュリアンの脳裏に浮かんだ。
「まさか…っ」
不確かな情報の撹乱で訓練場内の不穏な空気は増してゆく。もしこの情報が事実だとしたら、もっと事前に何か出来たのではないかと自責の念がじわりとジュリアンの胸に湧き上がる。
「どうした、顔色が悪いぞ…?」
「クロキ先輩、俺…」
ジュリアンは体内から熱が溢れる様な、それでいて頭の中が真っ白になる様な感覚に陥った。まさか、本当にあの二人がこの世界に反旗を翻したのだろうか───。
誰もが平穏に暮らせる筈のこのリノ・フェンティスタで内乱などおきて良い筈がない。
騒ぎは収まらない所か訓練場は騒然の波が渦巻いている。そこへ寄宿舎長のラッセルと警備隊の隊長が入って来た。
「……皆静粛にっ! カルデイロ隊長から説明がある」
普段は物腰の柔らかいラッセルの張り詰めた声色に場内は一度静まり返った。
カルデイロはシュサイラスア、風樹の都を管轄し治安を正す警備隊 隊長だ。
「皆、集まったな! 先刻、王宮警備隊のモンティージャ隊長から、少し遅れて国境警備隊のアダンソン隊長から通達が届いた」
「っ…!?」
場内がどよめく中、父の名が出てジュリアンも驚きを隠せずにいた。しかしカルデイロの次の言葉に息を飲んだ。
「簡潔に説明する。現在シュサイラスアは他国からの攻撃に遭っている。既に国境の先にある港町イグアルダはマルティーン帝国の襲撃により海が暴れ狂いかなりの水害が出ている。早急に人為救命が必要だ。今は何とか回しているが圧倒的に人員が足りない状況に置かれている」
「父さん……」
不安気に呟くとクロキがジュリアンの肩に手を置いた。
「いや、まだ陽が落ちたばかりだが起きたなら今直ぐに着替えろ。緊急事態らしい、訓練場に整列だ」
「整列? 緊急事態って、何かあったんですか?」
「詳細はまだ不明だが、しかし…」
クロキは今まで周囲に見せた事の無い不安気な表情で俯いた。
「先輩…?」
「いや、何か嫌な予感がする……」
クロキの予感は的中した。
訓練場に着くと既に集まっていた訓練生達が何やらざわついている。
そんな中ジュリアンの耳に一早く聞こえた言葉は〝内乱〟という二文字だった。
しかもルゥアンダ帝国とマルティーン帝国が手を結び、内乱陰謀を企てたと言う憶測だけの情報が飛び交っている。瞬間。例の二人がジュリアンの脳裏に浮かんだ。
「まさか…っ」
不確かな情報の撹乱で訓練場内の不穏な空気は増してゆく。もしこの情報が事実だとしたら、もっと事前に何か出来たのではないかと自責の念がじわりとジュリアンの胸に湧き上がる。
「どうした、顔色が悪いぞ…?」
「クロキ先輩、俺…」
ジュリアンは体内から熱が溢れる様な、それでいて頭の中が真っ白になる様な感覚に陥った。まさか、本当にあの二人がこの世界に反旗を翻したのだろうか───。
誰もが平穏に暮らせる筈のこのリノ・フェンティスタで内乱などおきて良い筈がない。
騒ぎは収まらない所か訓練場は騒然の波が渦巻いている。そこへ寄宿舎長のラッセルと警備隊の隊長が入って来た。
「……皆静粛にっ! カルデイロ隊長から説明がある」
普段は物腰の柔らかいラッセルの張り詰めた声色に場内は一度静まり返った。
カルデイロはシュサイラスア、風樹の都を管轄し治安を正す警備隊 隊長だ。
「皆、集まったな! 先刻、王宮警備隊のモンティージャ隊長から、少し遅れて国境警備隊のアダンソン隊長から通達が届いた」
「っ…!?」
場内がどよめく中、父の名が出てジュリアンも驚きを隠せずにいた。しかしカルデイロの次の言葉に息を飲んだ。
「簡潔に説明する。現在シュサイラスアは他国からの攻撃に遭っている。既に国境の先にある港町イグアルダはマルティーン帝国の襲撃により海が暴れ狂いかなりの水害が出ている。早急に人為救命が必要だ。今は何とか回しているが圧倒的に人員が足りない状況に置かれている」
「父さん……」
不安気に呟くとクロキがジュリアンの肩に手を置いた。