《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
定期的に起こる発作のような頭痛の緩和治療の為、王宮に留まる事となったハリ。
なるべく王宮に居やすい環境を作る為にもラインアーサはこう言った措置を取ったのだろう。
主の性格などもう分かり切っている。
ジュリアンは軽く息を吐くと暗に複雑とも言えない真情を吐露した。
「あいつの記憶。早く戻るといいな」
「うん。……俺、ハリを見てて思ったんだ。内乱で俺みたいに家族と離れ離れになった人達が沢山いるんじゃあないかって!」
「……アーサ」
「俺はこの国の王子だし、父様やジュリみたいに協力してくれる友だちも仲間もいる。だから困っている人が居るなら出来るだけ助けになりたいんだ! 俺に出来ることなんてほんの僅かかもしれないけど、それでもっ…」
「大丈夫だ、俺も手伝うって言ってんだろ。だからそんなに一人で抱え込むなよ?」
「うん! ありがとう、ジュリ!!」
───ジュリアンはこの向けられる太陽の様な笑顔を守る為ならば、出来る事は何だってやろうと心に決めた。
少し弱虫で、優しい。
頑なだが真っ直ぐなラインアーサの為に。
しかしながら、その笑顔を永遠に曇らせる様な出来事が起きてしまう。
その日は空は雲一つない満天の星空。
しかしとても風が強く、時折吹き抜ける豪風は城下の街の民家の屋根屋根を何度もがたがたと揺らす程だった。
何故か眠れずに起きていたジュリアンは寄宿舎の部屋の窓をも叩きつける風にやきもきしながら何度も寝返りを打っていた。
こんな時、よく話し相手になってくれていたクロキも今は港町イグアルダに配属されている為、内乱後数度しか顔を合わせていない。
ジュリアンはもう一度寝返りを打つとかつてクロキの使っていた空のベッドを見つめた。
「元気かな、父さんもクロキ先輩も」
そう呟きながら無理矢理にでも瞳を閉じて眠ろうとした。どれ位の間そうしていただろうか、ふと瞼を上げるともう既に朝の気配が近づいていた。
夜の間あれだけ吹いていた風もいつの間にか不気味な程に凪いでる。
大して睡眠時間は取れなかったがこれ以上横になっていても仕方がないので起き上がる事にした。まだ陽が登る前だが朝の鍛錬の準備をしている所、強めに部屋の扉が叩かれた。
「早朝に失礼……ジュリアン、起きていますか?」
扉を叩き、名を呼ぶ声はジュストベルのものだった。
「っじい様!? 何で此処に?」
なるべく王宮に居やすい環境を作る為にもラインアーサはこう言った措置を取ったのだろう。
主の性格などもう分かり切っている。
ジュリアンは軽く息を吐くと暗に複雑とも言えない真情を吐露した。
「あいつの記憶。早く戻るといいな」
「うん。……俺、ハリを見てて思ったんだ。内乱で俺みたいに家族と離れ離れになった人達が沢山いるんじゃあないかって!」
「……アーサ」
「俺はこの国の王子だし、父様やジュリみたいに協力してくれる友だちも仲間もいる。だから困っている人が居るなら出来るだけ助けになりたいんだ! 俺に出来ることなんてほんの僅かかもしれないけど、それでもっ…」
「大丈夫だ、俺も手伝うって言ってんだろ。だからそんなに一人で抱え込むなよ?」
「うん! ありがとう、ジュリ!!」
───ジュリアンはこの向けられる太陽の様な笑顔を守る為ならば、出来る事は何だってやろうと心に決めた。
少し弱虫で、優しい。
頑なだが真っ直ぐなラインアーサの為に。
しかしながら、その笑顔を永遠に曇らせる様な出来事が起きてしまう。
その日は空は雲一つない満天の星空。
しかしとても風が強く、時折吹き抜ける豪風は城下の街の民家の屋根屋根を何度もがたがたと揺らす程だった。
何故か眠れずに起きていたジュリアンは寄宿舎の部屋の窓をも叩きつける風にやきもきしながら何度も寝返りを打っていた。
こんな時、よく話し相手になってくれていたクロキも今は港町イグアルダに配属されている為、内乱後数度しか顔を合わせていない。
ジュリアンはもう一度寝返りを打つとかつてクロキの使っていた空のベッドを見つめた。
「元気かな、父さんもクロキ先輩も」
そう呟きながら無理矢理にでも瞳を閉じて眠ろうとした。どれ位の間そうしていただろうか、ふと瞼を上げるともう既に朝の気配が近づいていた。
夜の間あれだけ吹いていた風もいつの間にか不気味な程に凪いでる。
大して睡眠時間は取れなかったがこれ以上横になっていても仕方がないので起き上がる事にした。まだ陽が登る前だが朝の鍛錬の準備をしている所、強めに部屋の扉が叩かれた。
「早朝に失礼……ジュリアン、起きていますか?」
扉を叩き、名を呼ぶ声はジュストベルのものだった。
「っじい様!? 何で此処に?」