悪魔なアイツと、オレな私
置いてきていたつもりだったのに、学校につく頃には、レオは千秋より早く着いていて、案の定女子生徒に囲まれ、ちょっとした騒ぎになっていた。
「ねえねえ、転校生?」
「名前は?」
「どこから来たの?」
女子生徒の質問攻めにも、柔らかな微笑みを浮かべて律儀に自己紹介をしているようだ。
「レオだ。ここに来る前は海外に住んでいた」
「え!?じゃあ、レオ君て英語とか得意なの?」
「英語……?そうだな、今まで行った国の言葉は全て喋れる。良ければ教えるが……」
「え?本当?教えて、教えて!」
レオの答え一つ一つに歓声が沸き上がっている。千秋に対する態度とは程遠く、女子生徒に対しては好青年そのものだ。
「レオ!」
千秋が名前を呼ぶと漸く振り向いたレオは、またからかうような笑みを浮かべている。
女子達は千秋の登場に再び歓喜の声を上げたが、それに笑顔を返すよりも、千秋は何だか苛立ちの方が大きかった。
レオの腕を強引に引いて、教室へと向かって歩く。
「せっかくの良い所だったのに。お前も、あの中で、良い相手を見つけるチャンスだったんじゃないのか?」
「バカ言わないで。私は治人が好きなの」
「だったら割って入ってくる必要があったのか?それとも……俺が取られるのが嫌だったか?」
顔の距離が縮まって、切れ長の紅い瞳が此方を見つめている。
人間には絶対に無いであろう、その色が本当に綺麗で一瞬は怯んだものの、次の瞬間には鞄の紐を強く握りしめていた。
「そんなわけあるか、ナルシストド変態!」
出会った時同様に右頬に鞄をクリーンヒットさせた千秋は、崩れ落ちたレオに一瞥もくれず、鼻をならして教室へと向かったのだった。