悪魔なアイツと、オレな私
リルム
「『千秋一人になっちゃうでしょ』だと。さすがだな、主。もう、女を一人手籠めにしたのか」
「……変な言い方やめて!本当、デリカシーの欠片もない奴」
「俺にそんなもの求めるのが間違っている。しかし、幸先良いスタートだな。男の人生も悪くないだろう?」
部屋に戻ると制服からスーツに着替えたレオが、何か含んだ笑みを浮かべて待っていたので嫌な予感はしていた。
案の定、全てを監視していたようで、治人や亜里沙の事をどこか馬鹿にした口調で大演説を始めている。
悪魔とは本当に最低な生き物だ。
少し顔が良いからといって、この性格ではマイナスどころか即座に返品して二度とここに戻れないように、霊媒師にでも頼みたい。
「だから、亜里沙はそんなんじゃないって言ってるのに!」
「それは、お前の方はな」
即答で返してきたレオは、ソファーベッドに寛ぎながら意味深な笑みを見せる。
その笑みの意味は何となく理解していた千秋は、可能性を否定する。
「いや、無いよ。だって、亜里沙とは親友だし、だって……」
「女同士だ、とでも言うつもりか?残念だが、お前が女だと理解しているのは、お前と俺だけだ」
「うっ……」
そうだった、と千秋は契約の際の記憶操作の事を思い出す。現に常に一緒に行動していた亜里沙に、朝それが理由で避けられたのだ。
「つまり、あの毒舌女からすれば、お前も脳筋バカも同じ親しい異性の一人なんだよ。いつ、惚れられても別に可笑しくない」
「だから、治人と亜里沙の事そんな風に言うのはやめてって!私は……亜里沙は親友だし、治人が好きな人で……」
「この状況で、お前の望む関係性が保てれば良いな?まあ、戻りたいならいつでも言え。俺の力で戻してやる……条件は、それなりにあるけどな」
此方に近づいてきたレオに顎を触れられて距離が近づく。
紅い瞳は相変わらず作り物の様に綺麗で、固唾を飲んでしまったが、その手を振り払った。
「嫌だ!あんたの手なんかもう借りない!絶対にどうにかして、元に戻るんだから!」
「精々頑張れよ、主殿」
小馬鹿にしたレオは再びソファーベッドへと戻っていく。
絶対にこんな奴の手玉に取られてたまるか!