悪魔なアイツと、オレな私
王子様
「えっと……、ごめん!俺……千秋の事、何て言うか……そんな風に見たこと無くて」
校舎裏。勇気を振り絞って、今までの想いを伝えてみようと呼び出した初めての告白は、物の見事に玉砕した。
目の前のスポーツマンのムードメーカーである神崎治人(かんざき はると)は、この空気が耐えきれ無さそうに眉を下げる。
「千秋って彼女より、一緒に居て馬鹿な事言ったり、楽しく騒いだりさ、そんな居心地の良さなんだよ。そういう意味じゃ、お前の事は凄い大切だって思うんだけど……」
「……要は、友達って事だよね……?」
そんなフォローを貰っても、要は可愛くないと言われている様なものなんじゃないか?と思ってしまうのは、性格がひねくれてるからなのか……。
千秋に決定打を口にされて、益々申し訳なさそうに俯いた目の前の片想いの存在だった彼は、頭を下げる。
「うん、ごめん。……俺、勝手だけど千秋とは、これからも友達として、仲良くやっていきたいんだ。その……そういうのは、やっぱ、無理か?」
顔を上げた時の治人の顔が、捨てられた子犬みたいに弱々しく見えて、千秋は思わず溜め息をこぼす。
これだから、彼の事は昔から憎めなくて大切なんだ。
「無理」
「え!?やっぱ、無理なのか!?」
「なわけないじゃん。私もなんか、色々溜まったの全部言っちゃったら、スッキリしたんだよ。
こっちこそ、ごめんね。治人、こういう空気苦手なの分かってたのにさ。
まあ、これからもさ、一緒に遊びに行ったりしようよ。もちろん、友達として」
思いっきり彼の肩を叩くと目を丸くしたが、直ぐに人懐こい笑顔を取り戻して、肩を抱いてくる。
彼にとっては親友に対するスキンシップなのだろうけれど、今の千秋にとってはとても複雑な距離感だった。