悪魔なアイツと、オレな私
目覚まし時計のアラームが鳴る。
遮光カーテンの隙間から、日の光が差し込んできた。
いつの間に朝がきていたのだろう?
いつの間に眠っていたのだろう?
体を起こすと、昨日不法侵入をしていた自称悪魔のレオという男の姿は消えてしまっていた。
夢だったのだろうか?
ああ、そうか。
全て疲労感が生んだ、夢だったのか。
千秋は、徐に自分の胸へと手を触れてみる。
そこに女性らしい柔らかな膨らみは…………無くなっていた。
「いやあああああ!」
早朝から一ノ瀬宅には、火曜サスペンス並の悲鳴が響き渡っていた。
「で?どうだ?人生変わった初日の朝は?」
どこからか用意されていた男子用の制服を身につけた千秋の横には、消えたと思い込んでいた男が並んでいる。
昨日とは違い、千秋と同じ制服を身に付けているのは、果たしてツッコんで良いものなのだろうか?
「最悪……。夢であって欲しかったわよ」
「低い声でその口調で喋るな」
「あんたね、誰のせいだと!?」
思わず声を荒くした千秋に、驚いた表情の生徒達の視線を浴びる。
恥ずかしくなった千秋は思わず視線を反らして、レオの腕を無理矢理に掴むと通学路を少し外れた細道に連れ込んだ。
「どうした?」
「どうした?じゃない!まさか、あんた……その制服……」
「ああ、これか。どうだ?似合うだろう。俺の横に居てしまっては、お前も俺の引き立て役にしかならないが、少し我慢しろ」
どこまでも自信過剰でナルシストな自己評価に千秋も青筋を浮かべたものの、今はレオのバカな演説を真に受けているわけにはいかない。
「そうじゃなくて、何であんたが制服を着てるのよ!」
「主と契約したんだ。お前を常に監視下に置くのは当然だろう。大丈夫だ、ここの学校とやらは平民達が戯れる学びの場と聞いている。安心しろ、不本意だが溶け込んでやる」
「勘弁してよ!大体、私の事はどうなるの!?こんな姿で、どうにか別人をやるしかないのに!」
「どうして別人になる必要がある?」
「こんな姿なのよ!?別人として行くしか無いじゃない」
「ああ、その事なら……心配するな。お前は…………」
二人で細道に隠れてヒソヒソ話をしていた時だ。レオが何か言いかけたところで、千秋達の側に寄ってくる一つの人影。
「あら、千秋?何してるの?」