初恋~ある女の恋愛物語~
はしゃいだ後の砂浜は
寂しい雰囲気で
いっぱいになっていた

波のザブーンという
音だけが響いていた

浩太さんと並んで
砂浜に座る

『楽しかった?』

心配そうに聞いてくる
浩太さん

『すごく楽しかったよ』

私は素直に答えた

笑顔も一緒に
浩太さんに向けた

『千穂ちゃん』

浩太さんは私の目を
見ないで言った

『ん?』

靴を脱いでいた私は
自分の足に砂をかけた

『まだ辛い思い
してるの?』

急な問いかけに
私は戸惑った

どう答えたらいいのか
わからないでいた

『ごめん。俺が関わる
事じゃないよな』

浩太さんの気遣いに
胸が痛む

私は足にかけた砂を
落とした

『私の事、最低な
女だと思ってるでしょ』

私は否定しなかった

その事で浩太さんは
私がまだ関係を
続けている事を
悟ってくれたはず

『言いたくなかったら
言わなくてもいいよ』

また優しい言葉を
私にくれる

『何でそんなに
優しくしてくれるの?』

『千穂ちゃんを
泣かせる奴が
許せなくてな。
そんなの千穂ちゃんには迷惑だよな…』

浩太さんの呟く言葉が
私の涙を誘った
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