初恋~ある女の恋愛物語~
泣いている私を
ずっと抱きしめて
くれていた

何も言わずに、ただ
私を抱きしめていた

ようやく顔を上げた
私に、浩太さんは
微笑んでくれていた

その笑顔を壊したくない

でも私にはもったいない

私はそんな優しさに
包まれる資格なんか
ないんだから

自分の意志もうまく
伝えられない
弱い女なんだから

『私は幸せになっちゃ
いけないんだよ』

『千穂ちゃん。自分を
そんなに責めてたら
ダメだよ。幸せに
なっちゃいけないなんて誰が決めたの?
人間には誰もが
幸せになる権利を
持ってるんだよ』

『私は浩太さんが
思ってる以上に
最低な女なの。
浩太さんは知らない
だけなんだよ。私には
幸せなんて権利は
ないんだ。浩太さんを
不幸にしか出来ない』

またポロポロと零れた涙

浩太さんは私の涙を
自分の手で拭いながら

『俺が救ってやる。
最初は我慢するから。
俺に気持ちを預けて
みてくれないかな』

と真剣な顔をして言った

私は首を横に振った

『どうして!』

『私はまだ浩太さんに
言ってない事がある』

そう

私はまだ馨さんとの事を話していなかった
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