初恋~ある女の恋愛物語~
私は長い沈黙に
耐えきれなくなって
トイレに立った

トイレで鏡に向かって
化粧を直した

もう一度口紅を
塗り直した

話さなきゃ…

終わらせなきゃ…

何度も何度も自分に
言い聞かせた

馨さんの瞳を見ると
言えなくなってしまう

馨さんの指先に
触れたくなってしまう

私はちゃんと離れて
いけるのだろうか

不安だけが押し寄せる

トイレの鏡に写る私は
笑顔を忘れていた

トイレから戻り、また
向かい合って座った

重い空気はそのまま

馨さんの目を見る事
さえも出来ない私

『千穂…』

呼びかけられて
馨さんの目を見た

その目はとても
悲しそうな目をしていた

そんな目で見られたら
また切り出せなく
なってしまうじゃない

もうそんな目で
私を見ないで

もう苦しませないで

お互い楽になろうよ

もう幕は下ろさなきゃ
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