初恋~ある女の恋愛物語~
私の言葉に馨さんは
何も言わずにタバコを
灰皿に押し付けた

『もう終わりにしよ』

私はそう告げた

今まで言えなかった
終わりを告げる言葉

それでも馨さんは
何も言わない

『私を想ってくれてた事すごく嬉しいよ。
ありがとう』

涙をこらえて、最後を
迎えようと、私は
立ち上がった

私の行動を見て、
馨さんも立ち上がった

バッグを持つ私の手は
震えていた

そんな私の手を
優しく馨さんが握った

せっかくこらえていた
涙がまた零れそうになる

私は髪をかきあげ
涙を振り切った

そして馨さんが握る手に私の反対の手を当てて

『もう辛い想いは
お互いやめようよ』

と言った

辞めようと伝えるのが
私になるなんて
思ってもいなかった

いつかは捨てられる

そう思っていた恋
だったはずなのに
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