初恋~ある女の恋愛物語~
立ち上がる私の
腕を掴み、抱きしめて
キスをしてくる

『もう行かなきゃ』

言いたい言葉は
全部言えた

私の愛は伝えられた

馨さんの愛も受け取った

後悔はない

もう一生会えない
かもしれない

それでも仕方ない

お互いの歩む道が
違っていたんだ

扉の前でまた抱き合って
唇を重ねる

激しいキス…

最後のキス…

『さよなら、馨さん』

『さよなら、千穂』

絡めていた手を離した

名残惜しかった

離したくなかった
その手は、私も
馨さんも震えていた

私は扉に手をかけた

震えたままの手で

重い扉を開ける

新しい道を進むように

そして見送る馨さんに
笑顔を向けた

扉が閉まる…

また涙が出た

私は泣き顔を誰かに
見られないように
小走りで
ホテルを後にした
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