初恋～ある女の恋愛物語～

退院を迎えた

今、私の病室には
馨さんと奥さんが居る

一番見たくなかった光景

馨さんは他人を装った

私はそれに応えた

２人は何度も私に
頭を下げて、謝った

お困りの時は…
そう言って、馨さんは
私に名刺を差し出した

私はそれを受け取り
頭を下げた

奥さんは憔悴しきった
顔をしていた

私の為に辛い思いを
してくれたんだと思うと胸が痛んだ

もう大丈夫ですからと
奥さんに言う

もう帰ってこない
私の赤ちゃん

私は笑顔を見せた

奥さんに向かって
とびきりの笑顔を向けた

『私の赤ちゃんの事情は聞いてますよね？
私、１人で育てる
自信もなくて。
そんな母親に
育てられるよりは
天国にいる方が幸せ
だったのかも
しれませんから。
もう大丈夫です』