初恋~ある女の恋愛物語~
『入院してもらう
準備を進めている
ところなんだ。
仕事の引き継ぎとか
やる事が残されている
みたいだったから』

馨さんのやる事の中に
私に告げるという事も
含まれているんだろうか

私にさよならを
告げるという事が

私を残して
逝ってしまう馨さん

もう離れないと
決めていたはずなのに

馨さんを失う恐怖は
想像を絶するほど
残酷な仕打ちだった

また思い出したかの
ように、私は泣き叫ぶ

そのたびに大介が
私を抱きしめて
止めてくれていた

今は大介が私を
求めている事など
考えられなかった

自分勝手な女だ

私に降りかかる痛みは
どんな痛みよりも
傷が深かった

神さまはまだ私に
痛みを与える

心が叫んでいた

私が何をしたと
いうんだろうか

なぜこんなに私に
辛さを与えるんだろう

もうボロボロだった

大介の温かさだけが
私の救いだった

大介に頼んでも、
馨さんは助からない

本人の生きたいという
気持ちの分だけ
生きられると
大介は言った

私は違うと思う

馨さんは生きる事を
諦めたりはしていない
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