初恋~ある女の恋愛物語~
もうすぐ最後を迎える
人間の笑顔は
優しくて、心を
癒やしてくれるもの

その笑顔に、私も
笑顔で答えなきゃ
いけないんだと思った

別れの前に、2人で
朝日を見ながら
コーヒーを飲んだ

苦くて切ない味だった

馨さんとの最後の時間はこうして幕を閉じた

もう会えなくなる
最後の時間

時計を巻き戻して欲しい

叶わない願いだけが
込み上げてくる

部屋を出る前に
手を握り合って
キスをした

“生まれ変わったら
また恋に落ちて
今度こそ一緒になって
一緒に死を迎えような”

と約束を交わした

その約束は、来世で
必ず叶えると誓った

私は涙を見せなかった

笑顔で別れを告げた

ホテルの部屋を
出るまでは…

我慢の限界だった

小走りでタクシーを
拾って、タクシーの中で号泣した
< 356 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop