釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~


ホテルのディナーはとても美味しいのに

何もかも初めての私と

何もかも慣れた様子の彼とでは温度差がある。

楽しいはずの旅行初日は、料理の味も

響君とどんな会話をしたかも、よく覚えていない

ただ

なんとなく

世界が灰色がかってるように

淋しかった。


部屋の前

「朝六時には迎えに来るから、今日はゆっくり寝るんだよ。」

「・・・うん。」

私の顔を見つめ

髪を撫でてくれる響君の態度はいつもと同じなのに

キスをしようと彼が唇を寄せた時

不意に避けてしまった私がいた。

避けてしまったことに気付かれてしまっただろうか・・・

一瞬、驚いた様子の彼に、私は知らないふりをして「おやすみ。」と囁いた。

そして返事も待たずに部屋に入るなり自己嫌悪。


初めての海外デートで・・・

私は一体、何をやってるのだろう。

キスを避けた時の響君の表情・・・

絶対にバレてる気がする・・・。


明日・・・合わすかおがない。

明日なんか・・・

こなくてもいい。


こんな旅行になるなら・・・

来ない方が良かったかもしれない。


それなら、普通に近場をお散歩デートしたりしていたほうが

よっぽど楽しかったかもしれない。


どんどん

嫌な気持ちが膨れ上がって

涙が滲む。


私の寂しさに気付いてくれない響君も・・・

こんな風に考えてしまう自分も嫌だ・・・。




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