釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
会議を終えて、企画部に顔をだし、帰ろうとした時だった。背後から引っ張られ叫ぶ間もなく、非常階段に連れ込まれた私は、青ざめながら頭の上にある顔を見上げた。
「ひ、響君っ⁉
何⁉人さらいかと思ってビックリした‼」
大声を上げる私を背中から捕まえたまま、彼は申し訳なさそうに「ごめん。テンパッてた。」と呟いた。
「声くらいかけてよぉ・・・」
「もう、帰っちゃったんじゃないかって・・・ずっと探してて
彩葉ちゃんの姿、見つけたら思わずさらっちゃった。」
まだ心臓がバクバク音をたてているのは、驚いた事が原因なのか・・・
背中に響君の温もりが直に感じるからなのか自分でも分からない。
どうして良いのか分からなくて、暫く続く沈黙の後、我に返ったように「ご、ごめん」と、慌てて彼が体を離したから、ようやく
正面向いて彼の顔が見れた。
けど、本当はもう少し
抱き締められていたかった。なんて
図々しく思ってしまう。
お互い、照れ笑いを浮かべながら非常階段に並んで腰をおろすと「手紙、ありがとう。」と響君がポケットから携帯を取り出して、操作を始めた。
すると、私の携帯のメールの着信音が鳴る。
「それ、俺のアドレスだから・・・。帰ったら・・・確認して。」と、しどろもどろに言うから、もしかしたら、迷惑だったのかも。と、不安に感じてしまう。