釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~


辞表願いと書かれた紙には私事を理由にした退職事由と、既に私の名前が印刷されている。


「会社では今、響社長は体調不良で休暇を取り、その期間だけ國一様が代わっている。と、いうことになっています。

貴女がそこに捺印さえすれば、全てが元に戻ります。」


全てが元に戻る・・・?

そんなわけない。

そんなわけは無いけれど

これでハッキリと自覚した。

やっぱり、彼と私じゃあ、釣り合わない。

好きでいることさえきっと、許されない。

「私が捺印をすれば、響君は今まで通りに戻れるんですね・・・?」

力無く呟いた私に緒方さんは一瞬、伏し目がちになった。

「國一様がそう仰っています。」

その言葉を聞いて、私はもう一つの事を確信した。

きっと緒方さんも不安なのだろう。

私に対する交渉人という立場でここへ来たからには、彼女もきっと背負わされている物があるのだろう。

全ては私の出す答えと、響君のお父さんの出す答えに懸かっているということなんだ・・・。

「印鑑・・・部屋にあるので上がってください。」


私はどんな表情をしていたのだろうか、自分でも分からなかった。


けど、ずっと表情の変わらなかった彼女の悲しそうな顔が見えた時

鏡を見ているような気分になった。

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