釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
#7
それから数ヵ月後
私は実家に帰って、うどん屋のパート務め。
この田舎じゃあなかなか、再就職をすぐに見つけることは難しい。
何もかも失って、まだ心の中は空っぽのままで
唯一救われたのは、数年ぶりにかけた電話で、ただ、帰りたいと話した私にお母さんが「気を付けて帰っておいで」と、優しい声で言ってくれた事だ。
電話をしながらたくさん泣いた。
緒方さんとのやり取りの中で一粒も零れなかった涙が、濁流のように溢れて流れた。
それでスッキリしたわけじゃない。
だけど、どうにもならないことがあるって、自分に言い聞かせる事ができた。
響君のことも
時間がゆっくり忘れさせてくれる。と、信じるしかなかった。
「彩葉ちゃん、俺、天ぷらうどんねー。」
「はーい!」
この田舎町では飲食店が少ないから、お客さんの殆どが馴染みの客なんだ。
お昼時なんて特に、列ができるほどに繁盛するこのうどん屋は、私が物心ついた時には既にあって、家族でちょくちょく、食べに来ていた。
その頃から代わらないうどん屋のおじさんと、その奥さんと、夫婦でなんとか回してるのだ。
「天ぷらうどん一丁!!」
「はいよー!」
カウンターから厨房に声をかけると、厨房担当のおじさんの元気な声が返ってくる。