釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~


昔使っていた子供部屋を私の専用部屋にさせてもらい、妹が出ていったまま放置されていたベッドに寝転がって、これもそのまま置き去りにされていた学習机から、黒猫のマスコットストラップを手に取った。


このストラップはあの日、緒方さんが私の部屋に落としていった物だ。
まるで本物のダイヤを埋め込まれような首輪が綺麗で、捨てずに捨てれず、返す機会を逃して、私の手元に置いたままだ。

よく眺めれば眺めるほど、うっとりするほど綺麗な首輪で、外したら、指輪になるんじゃないかと思さえ、貧乏性の私は思ってしまう。

「このストラップ、高そう・・・」

いつか、会社宛に送らなきゃいけないと思いつつ

まだHAKUTOに関わりたくなくて時間だけが過ぎていく。


こんな風に終わった事に囚われたままでいるのは私だけなのかもしれない。

最後に、お別れすら言えなかったことがとても切なくて・・・

だけどきっと

最後に一目会っていたら

今よりずっと

恋しくてたまらなかったかもしれない。

矛盾した想い。

どれほど浸っても、あのささやかな日には戻れない。


一人になると、どうしても

こんな風に響君の笑顔が浮かんで

会いたくて

恋しくて

心が割れてしまいそうになる・・・

ようやくあまり考えなくなったけれど、寝る前の静かな時間だけはどうしても

彼の顔が浮かんで離ない。

まだ救われるのは

彼と体の関係がなかったことだ。

でも、今思うなら

一度でいいから抱かれたかった。

彼の温度を知りたかった・・・

知れば知るほど、ひきずる事になってしまうのに、知らなきゃ知らないで、そんなことを考えてしまうんだ・・・。


< 70 / 108 >

この作品をシェア

pagetop