釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~


クリスマス。変に気を利かせられてしまって、仕事が休みの私は、夕方来る妹と甥っ子のため、今日も働きに行ってるお母さんの代わりに、ご馳走を準備していた。

ご馳走と言ってもお金をかけずに。なんだけど・・・今まで一人暮らしだった私に大人数分作るのは、かなりの大仕事だ。

買い出しすら量がわからなくてかなりの時間を費やして、昼食も食べる暇無く台所で包丁を握っている。

唐揚げの濃い味が好きな次女のために、片栗粉と小麦粉を混ぜて絡めて、漬け込んだお肉を揚げる前にさっと酢醤油を再度かけてから熱した油に投入。酢を使うとお肉が柔らかくなるらしく、酢醤油にするのは味を少し濃くするためだ。

これが、佐野家の母の味。

みかん好きの甥っ子のためにみかんの皮を入れ物代わりににオレンジゼリー。

オーブンなんて無い貧乏家ならではのフライパンピザ。

昔はよくお母さんの台所に立つ後ろ姿を見ていたけれど

いつの間にか、あの背中も遠い遠い思いでなんだ。


その他にもオードブルを作っていると、いつの間にか日は暮れて、台所の小窓から見える街灯に明かりが灯った。

窓の外を眺めると、粉雪が舞っている。

こんな風にしみじみと色んなことを思い出したり、外の景色に目がいくのは、都会と違ってここは、時間がゆっくり流れているせいかもしれない。


< 71 / 108 >

この作品をシェア

pagetop