釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
「神門家の跡取りらしく、親父の奴隷になれって?」
響は帰る素振りも見せずに淡々と呟いた。
「彼女も潔く身を引いたのです。社長も彼女の幸せを願うなら、時には男らしい潔さを見せたらどうです?
彼女が社長と一緒にいれば、不幸になる。
それは、貴方が神門の跡取りだからですよ?
それくらい、ご自分でも分かってるでしょう?」
あくまで冷静に、説教を説く緒方の方へ椅子を回転させて両腕を組んだ響は、緒方を鋭いめつきで睨んだ。
「彼女の本心を俺は聞いてない」
「彼女を諦めて下さい。
何より傷つくのは彼女自身なんですよ?」
「随分、彼女の心配ばかりするんだね?
俺が彼女を守れないとでも?」
「現に貴方は彼女を守れなかった。それが現実となって、今の状況があるんです。
貴方にはまだ、誰かを守れるほどの力もない。」
食い下がる響に、一歩も譲らない緒方。
その場の空気がじわりじわりと凍りついていく・・・。
「違う。誰かを守る力がなかったのは親父だ・・・
緒方はただ、若い頃の親父と俺を重ねて見てるだけだろ・・・
彼女を、レラと重ねて見てるだけ。
・・・なんだろ?」
探るような目付きで緒方の顔を見る響。
"レラ"の名前が響の口から飛び出したことが思いがけなくて、不意を付かれた緒方は、何も言えず、目を伏せた。