釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
一通り、響君の話を少し伏し目がちに微笑みながら聞いていた奥様は
「知らない間に響も成長していたのね」と、どこか淋しげに、一人言のように呟いた。
「母さん、俺は彼女と結婚したいと思っている。
だから、彼女を俺のフィアンセとして認めて欲しいんだ。」
私の手をシッカリ繋いだまま、響君は少しの迷いも見せずに訴えかけた。
奥様は少し考えた様子で「そうね・・・」と、呟いたきり、暫く口を閉ざし、そんな奥様の様子を、隣でやきもきした表情で見つめている旦那様、
静けさに
部屋の中は時間を刻む秒針の音だけ響く。
すると、暫くして奥様はようやく、その口を開いた。
「貴方が自分で素敵な女性を見つけたのは分かったわ。
元々、婚約者を私達が勝手に決めるつもりはなかったの。
ねぇ?國一?」
奥様にちらりと横目で見られた旦那様は、咳払いをしながら「・・・そうだな。」と小さな声で呟いたから、思わず私と響君は嬉しくて顔を合わせたけれど
「でも、一つ、条件があるわ。」
奥様の言葉で、繋いだ手に力がこもる。
「条件?
・・・条件を満たせば彼女とのことを正式に認めてくれるのか?」
「ええ。そうよ。」
ふぅっと、一つ溜め息をついて奥様は、今一度姿勢を正すと、力のこもった瞳で響君を見据えた。