釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
「彩葉さん。ちょっと待って」
帰り際、屋敷の前まで私を追いかけてきた緒方さん。
彼女の様子を見て、私はストラップの事を思いだし、バッグからそれを取りだし、彼女に渡すと
それを大切そうに両手の平で包み込んだ彼女は
以前のような、冷淡な表情と違い、涙ぐみながら微笑んだ。
「ありがとう。やっぱり貴女の家に落としてきていたのね。」
「えぇ・・・すっかり返しそびれたままでごめんなさい。」
彼女の表情を見る限り、それが彼女の大切なものだということは、見てわかる。
「大切な物を落とした私が悪いんですもの・・・
これは友人の忘れ形見なの。」
そう言って微笑みんだ彼女は、年齢よりも随分と若くて綺麗に見えた。
彼女は私に深くお辞儀をすると、それを大切そうに見つめながら屋敷の中へと戻っていった。
「失礼かもしれないけど緒方さんって、冷徹な人だと思ってた。」
思わず呟いた私に同感するように響君も何度も頷く。
でも、これで1つ分かった。
緒方さんにしろ
響君のお父さんにしろ
この世界に冷たいだけの人なんていない。
どんな冷たく見える人にでも
必ず、その心を動かされる誰かがいること。
私の心を動かせるのは・・・
響君。
君以外の誰もいない。