社長は今日も私にだけ意地悪。
「……ご心配をお掛けしまして申し訳ありません。今日の仕事が終わったらゆっくり休みますので」

そう答えるも、彼は私の右腕から手を離さない。


「社長？」

「芽衣……痩せたな？」

「え？」

「ただでさえ細いのに、それ以上痩せてどうする。今朝はちゃんと食べたのか？ 昼食はどうするつもりだ。言え」

心配してくれているのはわかっているけれど、嬉しいとは思わなかった。
もしかしたら、自分のせいで私が痩せたと思い、それで仕方なく心配しているだけかもしれない。
そうじゃなきゃ、こんなに真剣な表情で私を気にかける理由なんてないもの。


「大丈夫です。きちんと食べますので、放っておいてください」

「こんなに青い顔して飯をまともに食ってない奴を放っておけるか。まだ時間あるだろうから、今から一緒に食いに行くぞ」

「や、やめてください！」

これ以上、美咲さんを不安にさせないでほしい。


これ以上、



社長のことを嫌いになりたくない。



「もう私にかかわらないでーー」


かかわらないでください、と最後まで言い切る前に、視界がぐにゃりと歪んだ。


「芽衣⁉︎」


足元がふらつき、立っていられなくなったと思ったその瞬間、私は社長に抱きとめられていた。
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