社長は今日も私にだけ意地悪。
社長室はとても広く、モノトーンで統一された、クールで落ち着きのある雰囲気の空間だった。
家具や素材が高級感に溢れていて、社長は毎日ここで仕事をしているんだなぁ……なんてぼんやりと思った。


「おろすぞ」

そう言って、社長は大きな高級そうなソファの上に私をそっと寝かせた。

天井を見つめながら、息を吐く。横になると少し楽になった。


「冷たい水と、温かい茶。どっちがいい?」

ソファの横に立ち、私の顔を覗き込みながら社長がそう尋ねてくる。

上から見おろされていることが恥ずかしくて、私はふいっと顔を背け「お構いなく」と答える。

すると彼は無言でその場から去っていってしまう。

私がさっきから、あまりに素っ気なく失礼な態度を取っているからさすがに怒った……?

社長と距離を置こうとしているのは私の方なのに、いざ離れていかれると嫌われたかもしれないと不安になるなんて……我ながらどうかしていると思う。


けれど数秒後、社長はすぐに私の隣へ戻ってくる。
そして、ソファの横にしゃがみ込んだ彼は、横たわる私の口元に何かを差し出してくる。


「……おにぎり?」

それは、真ん丸い形をした真っ白なおにぎり。


「俺の昼飯だ。とりあえず、それ食え」

そう話す彼の右手には、ペットボトルの水。


社長のお昼って……このおにぎりが? もっと高級なもの食べていてもおかしくなさそうだけれど……少なくともお昼におにぎりを食べているイメージは社長にはない。
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