社長は今日も私にだけ意地悪。
憧れ……? 私が、社長にとっての……?

憧れていたのは私の方なのに、そんな風に言われて感動……よりも驚きが勝り、何て答えたらいいかわからない。


「……数年後、その君と最終面接で会うとはまさか思わなかった」

「六年間も私の顔を覚えていたんですか?」

「当然。忘れない為に君に声を掛けて、君の顔を見たんだから」

すると彼の右手がそっと伸びてきて……私の頬に触れる。

暖かい感触。
胸がとくんと高鳴る。


「あの時に、俺は決めた。
この子と再び出会えたのは運命だ……それならば、絶対に離さない。必ず俺のものにする。
君にーー俺のことを好きにさせてみせると」


全身に熱が走り、鼓動が早まる。

告白……された。


「まあ、偽りの自分を好きになってもらっても意味がないから、君の前では素の自分を出していたけどな」

そうだった。もし王子様モードで接近されていたらあっさりと恋に落ちていたかもしれない……。
だけど、結局のところ私は〝素〟の彼に惚れてしまったのだ。
そう考えると……最初から素を見せてもらえて良かった。
好きになるなら、偽りの彼よりも本当の彼がいい。
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