社長は今日も私にだけ意地悪。

「私はスターエモーション・マネジメントで他アーティストの担当をしております、佐藤と申します」

言いながら、佐藤さんが目の前の彼らに名刺を渡す。さすがにアーティスト達の前ではさっきまでの毒舌や冷たい感じは出さないらしい。


「おい、お前も早く名刺出せ」

全員に名刺を渡し終えた佐藤さんが、少しイラッとした口調で私にそう言ってくる。


「すみません。新入社員の名刺が完成するのは一週間後って入社式で言われたんですが……」

「はぁ？ マジかよ。
皆さん、すみません。こちらが皆さんの担当マネージャーの柳葉です。今日から配属の為、名刺がないようで申し訳ありません」

佐藤さんがそう言うと、彼らの視線が私に一気に集まる。
なんとも気まずく、とりあえず元気の良さは伝えようと、


「柳葉 芽衣ですっ！ よろしくお願いします！」

と言って深々と頭を下げた。



すると、私の正面にいる茶髪の男性がにっこりと笑って「よろしくお願いします」と返してくれた。
髪が少し長くて一見すると軽い感じだけれど、優しくて甘いマスクをしていた。


その後、彼らの方も自己紹介をしてくれた。


まず、先ほど挨拶を返してくれた茶髪の男性が、井ノ森 翔（いのもり しょう）さん。二十四歳。優しそうで、常ににこにこした表情を崩さない。バンドではドラムを叩いており、このグループのリーダーらしい。


続いて、佐藤さんの正面に座る金髪のイケメン男性が、木崎 凛太朗（きざき りんたろう）さん、二十三歳。このバンドのベース＆ボーカルで、このグループの作曲は彼が担当することが多いらしい。井ノ森さんが甘いマスクをしているのに対し、木崎さんは切れ長で鋭い瞳をしたワイルド系。何度見ても圧倒的なかっこ良さだ。