社長は今日も私にだけ意地悪。
ーーミュージックインホームの特番から二週間が経過した。
RED searchはと言えば、あれ以来、多くの音楽番組からの出演依頼が来ている。来月には、決して大規模ではないけれど野外ライブの予定もある。
long riverの代打として出演した彼等へのバッシングは……想像以上に少なかった。
勿論、全くない訳ではなかったけれど、どちらかと言えば番組の危機を救い、更には番組の盛り上げに貢献したというヒーロー扱いが大半だった。
その後の仕事の流れも好調で、この勢いの波に乗りながらもっと頑張っていかなければと思う。
「俺達のこと好きって言ってくれる女の子達、増えたよね」
打ち合わせ室で椅子に腰掛けながら、井ノ森さんが携帯をいじりつつそう言う。
「ネットの評判を見ているんですか? 悪いことが書かれる可能性もありますので、そういうのはあまり見ないでください」
「えー、平気だよ。女の子達の応援見るときゅんとするんだもん」
「駄目です。それにしばらくは恋愛禁止にした方がいいなって思いましたし」
「あー、うん。恋愛禁止……え?」
井ノ森さんが、元から丸い目を更に丸くして私を見つめる。
他の三人も怪訝な顔でやはり私を見やる。
「めぇちゃん、恋愛禁止って何? そりゃあ俺達、今は全員フリーだけど、普通に彼女欲しいって常に思ってるよ? アイドルじゃあるまいし、恋愛禁止っておかしいでしょ」
「一生禁止って訳じゃないですよ。しばらくは、です。知名度が上がり始めている大切な時期ですから、それと対称にスキャンダルは命取りだなと感じました」
少々荒っぽい提案かなと思ったけれど、これも彼等の為。恋愛をしている時間より、音楽を大事にする時間を増やしてほしいと思うし。
すると、白石さんがいつも通りの至って冷静な口調で、
「芽衣さん、自分は彼氏いるくせに」
と言ってきて。