社長は今日も私にだけ意地悪。
社長は忙しい人だし、私も私でRED searchの仕事の依頼がミュージックインホーム効果で急激に増えていた為、ここ三ヶ月はデートどころかオフィスで擦れ違うことすら稀だった。電話やメッセージの交換はなるべくしていたし、無理やり時間を作って食事をしたこともあったけれど。

お互いにまだまだ忙しい日は続いているけれど、今日はようやく二人の休日が重なった為、なんと遊園地にやって来た。


「私、遊園地凄く久し振りです!」

入園ゲートの前で既にわくわくしてしまっている私を見て、社長がくすっと笑う。


「子供みたいだな」

「なっ、酷いです」

笑われてしまった上に、子供みたいだとはショックだ。
常に大人な雰囲気を醸し出している社長の隣にいても恥ずかしくないよう、今日は服もメイクも髪も、普段より大人っぽいテイストに仕上げてきたつもりだったのに……内面までは、今すぐ大人っぽくとはいかないなあ。


「じゃあ行くか」

社長は、いつもの余裕な表情で私を見やり、やっぱり余裕いっぱいな様子でそう言う。

ブラックのコーチジャケットに、グレーのテーパードパンツ。
全体的にダークトーンの私服に身を包んだ彼は、今日もオーラに溢れた大人の男性。


私が少し背伸びをしたくらいでは、彼には到底釣り合わない。
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