社長は今日も私にだけ意地悪。
「け、圭さん?」

思わずきょとんとして彼を見つめてしまう。
だって……私、彼が笑うようなこと言った?

すると。

「ああ、ごめんごめん。凄く必死になってるから面白くて」

面白い……って、まさか……!


「か、からかったんですか⁉︎ 今のプロポーズは嘘⁉︎」

「え? それは違う。俺はいつでも本気だよ。……ただ、芽衣がそう返してくるだろうっていうのはわかっていたから」

だって、芽衣の本命の男はRED searchだもんな、と彼は言う。
それは、違うけれど……。
いや、違くもない? でも……。

うーん、と考えだす私を見て、圭さんはまたふきだした。


そして。

「だけど、それでも伝えたかったんだ。今の俺の気持ちを。
ああ、それにしても緊張したな。まだ心臓が鳴り止まない」

「え?」

思わず首を傾げて彼を見つめてしまう。


「圭さんでも緊張するんですか?」

「あのな、俺を何だと思ってるんだ。人並みに緊張するし、そもそも今日は朝から余裕がなかった」

「え?」

「……ずっと好きだった女の子と念願の初デートだぞ。余裕なんかある訳がないだろうが」

言葉と同時に、彼の手が正面から伸びてきて私の右手を掴む。
私の手はそのまま彼の胸元まで持っていかれ、あてがわれる。


圭さんの心臓、凄くドキドキしてる……。
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