社長は今日も私にだけ意地悪。
「じゃあめぇちゃん、何かあったら連絡してね〜」

ひらひらと手を振りながら、井ノ森さんが打ち合わせ室を出ていく。
それに続くように、他の三人もこの場を去る。

もちろん「皆さん、ちょっと待ってください」と声を掛けたものの、足を止めてくれる人は一人もいなかった。


一人になった打ち合わせ室で、私は呆然と立ち尽くす。


さっきの無茶な提案……叶えられなかったら私はどうなるのだろう。マネージャー失格? そうなったら、今後彼等が私を信頼してくれることはなくなるのだろうか?



とはいえ、木崎さんの態度といい、白石さんのこの提案いい、それらに対して何も言わない井ノ森さんと青野さんといい、いくらなんでも彼等は少し失礼過ぎやしないだろうか。
そりゃあ確かに、私はこの仕事のことをまだよく分かっていないけれど、始まる前から無能扱いされている気がしてならない。


……でも、無能じゃないことを示す方法も思い付かない。


とりあえず、営業部室に戻って佐藤さんに相談してみようか。

そう思い、打ち合わせ室の電気を消して廊下に出るとーー




「やあ。打ち合わせかな? お疲れ様」



そこに、星崎社長がいたのだから驚きだ。
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