社長は今日も私にだけ意地悪。
「社長! どうしてここに?」

「そろそろ終わるかなと思って待ってたんだ。どうだった? 自分がこれから担当していくアーティスト達と対面してみて」


どうだったかと言われても、完全に舐められているし、無能扱いされているし、何より無茶苦茶な提案をされてしまった。


そんなことは、私を彼らのマネージャーに直々に任命した社長には言えず、「ええと、まあ……」という曖昧すぎる返事しか出来なかったのだけれど、その代わりにこれだけは聞かずにはいられなかった。


「社長……どうして私を突然マネージャーに任命したのですか?」


しばらく研修期間を経てから担当に付くのが普通と言うのなら、普通じゃないことを指示された理由はちゃんと聞きたい。
……上手くやっていける自信がないから、尚更。


「どうしてそう聞くの? 自信ない?」

「え……」

社長は私の心を見透かしているのだろうか。心の中で考えていたことをまさに言い当てられ、思わず言葉に詰まる。


だけど、社長の声と瞳はどこまでも優しく私を包み込む。


心配してくれているのであろう言葉も素直に嬉しい。


社長には弱音を吐いてはいけない……そう思ったばかりなのに、彼の優しさに引っ張られるように、


「……自信はありません。不安でいっぱいです」


と、私は弱音を吐露した。
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