社長は今日も私にだけ意地悪。
カサッと広げると、そこに書いてあったのはーー


「……電話番号?」


携帯電話の番号のようだ。誰の番号?
……まさか。



「俺の携帯だ。何かあったら電話しろ」

やっぱり⁉︎
何で社長が私なんかに自分の電話番号を教えるの⁉︎



「入社早々、お前に無茶な業務命令を下したのは俺だからな。その代わり、分からないことや心配なこととか、何かあれば気軽に電話しろ」

「いや、でも……!」

「ちなみにプライベート用の携帯だから、夜でも構わない」

「は、はい⁉︎
ま、待ってください! この携帯電話、業務用じゃなくてプライベート用なんですか⁉︎」


動揺する私に構うことなく、彼はにっこりと〝優しく〟微笑み、


「そうだよ。何か問題ある?」

「も、問題大有りですよ!」

「ふぅん、そう?
まあ、とにかく頑張ってね。柳葉さん」


一方的にそう言い残し、彼はエレベーターの方へ向かって歩いていった。



……一方私はその場から動けず、段々と小さくなっていく彼の背中を見つめることしか出来なかった……。



先ほど渡されたメモ用紙に書かれた数字を、もう一度見つめる。



社長に電話なんて、絶対にする訳がない。私には必要のないメモ用紙だ。



……そう分かっているのに。
そのメモ用紙を捨てようとは思えなくて。

丁寧に折り畳んだ後、携帯カバーの内ポケットへとしまい込んだ。
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