社長は今日も私にだけ意地悪。
3.
「何かないかなぁ〜……」
このセリフ、何度目だろう。
私がデスクの前のパソコンの画面とにらめっこしながら唸ると、隣から佐藤さんが「いい加減諦めろ」と言ってくる。
突然マネージャーに任命された社会人生活初日から、二日。
あの日、営業部室に戻った私は、Red searchの彼等に言われた〝一週間以内に百人の前でライブするステージが欲しい〟という無茶な要求について佐藤さんに報告した。
佐藤さんは呆れながら『そんなの無理に決まってんだろ』とそれを一蹴。
やっぱりそうだよね、と思いながらも、まだ彼等にその報告は出来ていない。奇跡的にそういう仕事はないだろうかと、パソコンで出演要請をチェックしたり、各地のライブステージ会場について調べたりを続けていた。
そんな私に、彼はもう何回目かの「諦めろって」を言ってくる。
「あのな、事務所に所属したばかりの無名の新人にそんな都合の良いオファーが来る訳ないだろ。
ってことは、ステージを用意したいならオファーを待つんじゃなくてこちら側が自ら用意しないといけない。ここまでは当たり前のことだから理解出来るな?」
「はい」
順を追って丁寧に説明しようとしてくれる佐藤さん。
教育係なんて面倒臭いと言っていたからだけれど、実は案外面倒見が良いんじゃないかと最近は思い始めている。