社長は今日も私にだけ意地悪。
「ステージ、見付かったって?」
私にそう尋ねるのは、Red searchのリーダーの井ノ森さんだ。
常ににこやかな顔を絶やさない彼だけれど、さすがに今は驚きの表情が伺える。
「はい。先程、そのステージの運営担当の方にも電話をして確認しました」
その確認の電話の後、私はすぐに彼等にも連絡をした。
そして午後になった今、おととい彼等と初対面した時に使用したこの打ち合わせ室へ全員で来てもらい、仕事の説明をしている。
「本来ならば出演募集は締め切っているそうなのですが、急に欠場者が出た為、出てくれたら運営側としても助かるとのことです。
既に完成しているステージをお借りする形なので、会場費は掛かりません。近場なので宿泊費も必要ないですし、機材も私が車で運びます。
何より、赤字になる心配がありません」
これ以上ないって位の素晴らしい提案……だと私は思っているのだけれど、四人の表情は笑顔とは程遠く、訝しげだ。
「皆さん?」
「そんなうまい話、ある?」
最初に口を開いたのは白石さんだった。
冷静な表情で、いつもと同じ淡々とした口調。
他の三人も、明らかに不審そうな顔をしている。