社長は今日も私にだけ意地悪。
「ネット上で、ちょっとした話題が思いがけず広まるっていうのは珍しくないだろ。音楽っていうのは老若男女問わずに関心があるジャンルだしな」

「それはそうだと思うんですが、やっぱり落ち着きません。殆どのコメントは〝削除される前にもっと聴きたかった〟とか〝話題になってる曲を自分も聴きたかった〟とかそういう類のものですが、中には〝売れないバンドグループの自作自演〟とか、そういう声もあるんですよ」

「そりゃ多少はそういう声もあるだろ。RED searchが有名になれば、アンチの声だって比べものにならないくらい多くなるぞ。今からそんなこといちいち気にしてんじゃねえよ」

うーん、確かにそうか。部長もそんなようなことを言っていたし、RED searchの彼等自身も気にしてはいない。私がここで色々言っていても仕方のないことか。

そう思い、一旦はパソコンを閉じ、気にしないように努めたのだけれど……。

それから一週間経っても話題が落ち着くことはなく、それどころかますます大きくなっていく。

さすがに、佐藤さんや部長もこの件に関して少し気にし始めるようになった、そんなある日のことだった。


「柳葉! ちょっと来なさい」

部長が、営業部室のデスクにいた私にそう声を掛ける。
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