社長は今日も私にだけ意地悪。
「そういうこと言うの、やめてください!」

「何で?」

「何でって……!」

わからないんですか⁉︎ と言おうとしたところで、ハッと言葉を飲み込んだ。
そうか、社長はそもそも浮気とすら思っていないんだ。
本気なのは恋人だけで、私のことはからかってアソンデイルだけ。


最初から馬鹿にされていたんだ、私。


「……すればいいじゃないですか」

「芽衣?」

俯いて発した言葉は小さくて彼には届かなかったようだ。
だから私はバッと顔を上げ、強気でキッと睨み付け、そして。


「メッセージの内容は言いません! キスしたければすればいいじゃないですか! どうせ出来ないくせに!」

本気で愛しているのが恋人だけなら、私にキスなんて出来ないはず。もういい。もう嫌だ。早くここから去りたい。


ーーその瞬間、彼が突然私の右腕を引っ張り、自分の方は抱き寄せ、そして。


私にキスをしてきた。
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