社長は今日も私にだけ意地悪。
そしてもう一度「帰ります」と言い放ち、もう一度彼に背中を向けて歩き出す。
「おい、だから待てって」
やっぱり彼は後ろから追い掛けてきて、私を引き止めようとする。
「帰るって、まさか歩いて帰るつもりか?」
「電車で帰るんです! 駅までは歩いていきます」
「芽衣! 俺の話をーー」
後ろから肩を掴まれ、無理やり振り向かせられる。
……いつの間にか涙が溢れていた泣き顔を正面から見られてしまった。
彼は私の顔を見て、驚いた表情をしていた。
そして。
「……悪かった」
呟くようにそう答え、それ以上詰め寄ってはこなかった。
「だけど、駅まで歩いていくのは危ないから駄目だ。嫌かもしれないけど、車で家まで送っていく」
そう言われ、私は彼の車に再び乗り込んだけれど、家に着くまでの間、社長と一言も会話は交わさなかった。私は頑なに口を閉ざし、絶対に目も合わさなかった。
……一番悔しくて悲しかったことは、社長からの何の意味もない裏切りのキスを……嬉しいと感じてしまっていることだった。
社長の恋人への罪悪感と、自分が社長にとってのアソビ相手だったという現実に、涙が止まらなかった。
「おい、だから待てって」
やっぱり彼は後ろから追い掛けてきて、私を引き止めようとする。
「帰るって、まさか歩いて帰るつもりか?」
「電車で帰るんです! 駅までは歩いていきます」
「芽衣! 俺の話をーー」
後ろから肩を掴まれ、無理やり振り向かせられる。
……いつの間にか涙が溢れていた泣き顔を正面から見られてしまった。
彼は私の顔を見て、驚いた表情をしていた。
そして。
「……悪かった」
呟くようにそう答え、それ以上詰め寄ってはこなかった。
「だけど、駅まで歩いていくのは危ないから駄目だ。嫌かもしれないけど、車で家まで送っていく」
そう言われ、私は彼の車に再び乗り込んだけれど、家に着くまでの間、社長と一言も会話は交わさなかった。私は頑なに口を閉ざし、絶対に目も合わさなかった。
……一番悔しくて悲しかったことは、社長からの何の意味もない裏切りのキスを……嬉しいと感じてしまっていることだった。
社長の恋人への罪悪感と、自分が社長にとってのアソビ相手だったという現実に、涙が止まらなかった。