社長は今日も私にだけ意地悪。
久し振りに会う彼の姿に、私の心臓は不覚にもドキンと高鳴る。
この不規則な胸の鼓動に、私はまだ彼のことが好きなのだと自覚させられるけれど、悟られてはいけないと、平然を装う。
「お疲れ様です」
そう言って一礼して、そのままその場を離れようとしたーーけれど、擦れ違いざまに彼に右手を掴まれ、それを阻止される。
驚いて反射的に見上げた彼の表情は、見たことのない苦しそうな顔をしていた。……どうしてそんな顔をするのだろう。苦しいのは……私の方のはずなのに。
「少し話せないか」
「……申し訳ありませんが、この後、ミュージックインホームのリハーサルがありますので」
「スケジュールは把握している。まだ時間あるだろ。この間のこと、やっぱりちゃんと話したい」
「っ、私は話したくないです!」
思わず大声をあげてしまった。行き交う人達がこちらをチラッと見やる。社長は有名人だから、ここで話すのは目立ちすぎる。彼もそう判断したのか、私からパッと手を離した。
「……悪かった。でも一つだけ確認させろ。……体調悪いだろ」
「えっ」
突然図星をつかれ、そんなことないですと言えなかった。
「やっぱり。芽衣のことだから今日の為に入れ込みすぎて、体調管理が疎かになっていたんだろう。体調管理も仕事のうち、なんてありきたりな言葉をわざわざ言わせるな」
もっともなことを言われ、反論は出来ない。
確かにここ数日、睡眠不足が続いている上に食事もまともに摂れていない。番組には私が出演する訳ではないけれど、マネージャーとしてのプレッシャーもあり、心も休まらなかった。
……必死に仕事をしていた方が、社長のことを考えずに済んだというのもあるけれど。
この不規則な胸の鼓動に、私はまだ彼のことが好きなのだと自覚させられるけれど、悟られてはいけないと、平然を装う。
「お疲れ様です」
そう言って一礼して、そのままその場を離れようとしたーーけれど、擦れ違いざまに彼に右手を掴まれ、それを阻止される。
驚いて反射的に見上げた彼の表情は、見たことのない苦しそうな顔をしていた。……どうしてそんな顔をするのだろう。苦しいのは……私の方のはずなのに。
「少し話せないか」
「……申し訳ありませんが、この後、ミュージックインホームのリハーサルがありますので」
「スケジュールは把握している。まだ時間あるだろ。この間のこと、やっぱりちゃんと話したい」
「っ、私は話したくないです!」
思わず大声をあげてしまった。行き交う人達がこちらをチラッと見やる。社長は有名人だから、ここで話すのは目立ちすぎる。彼もそう判断したのか、私からパッと手を離した。
「……悪かった。でも一つだけ確認させろ。……体調悪いだろ」
「えっ」
突然図星をつかれ、そんなことないですと言えなかった。
「やっぱり。芽衣のことだから今日の為に入れ込みすぎて、体調管理が疎かになっていたんだろう。体調管理も仕事のうち、なんてありきたりな言葉をわざわざ言わせるな」
もっともなことを言われ、反論は出来ない。
確かにここ数日、睡眠不足が続いている上に食事もまともに摂れていない。番組には私が出演する訳ではないけれど、マネージャーとしてのプレッシャーもあり、心も休まらなかった。
……必死に仕事をしていた方が、社長のことを考えずに済んだというのもあるけれど。