キミはずっと、かけがえない人
「ちょっと、1人で泣かないでよ。本当に苦しそうだよ?
とりあえず、ぐちゃぐちゃでもいいから吐き出して。そうすれば、少しはラクになるよ」
「どうしよう……。今気づいたって……私たちは契約で成り立っている。本心は手に入らないのに。
一緒に住んでいるのが、苦しくなる。ヤるだけになっちゃう。気まずくはなりたくないのに」
「ちょっと待って。ヤるだけって何?
亜依、まさか……」
「一緒に住むってなった時、当たり前のように寝室が一緒だった。既成事実を作るとまで言われた。でも、何もなかった。一緒のベッドで眠りはしたけど、手は出してこなかった」
「じゃあ、何もしてない?」
その問いに、静かに首を振る。
「仕事中、会社に彼の婚約者を名乗る人が来たの。まぁ、実際は彼女が勝手に言っているだけで、彼は知らない人だったみたいだけど。
その時に、ちょっと弱みを見せたみたいで、そこにつけこまれて……」
「最後までしたの?」
こくりと頷く。
「何してんの⁉」