キミはずっと、かけがえない人



さっきまでよりは小さな声だけど、聞こえるように呼んだ。

そしたら、驚くことに彼の顔が赤くなっている。

珍しいことだ。



「……思ったより、クるな」

「は?」

「とりあえず食ったし、ここでやることはすんだ。急いで帰ろう」



そう言って、急に立ち上がる。



「え?急にどうしたの?」

「我慢出来なくなった」

「は?我慢?」

「ヤりたくなった。今すぐ、亜依を抱きたい」

「は?ちょっと、何を言って……」

「いいから帰るよ」



私が戸惑っているのにも関わらず、私の手を引き歩き出す。

会計は?と聞く暇もなく。

彼は真っ直ぐ家へ向かう。

今の会話の中、どこに引き金なんてあったのだろうか。

名前を呼んだだけで、そんな風になる?




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