キミはずっと、かけがえない人
5th*壊れそうなほどに
「ねぇ、アンタって婚約者いっぱいいるの?」
「は?」
夕食時に、さっそく彼に言う。
言いたいことはたくさんあるけど、全てに文句を言うのがめんどくさい。
とりあえず、今日の女の存在だけでも言っておこうと思った。
そしたら、何言ってんの?って目で見られる。
「いる訳ねぇけど、何で?」
「今日、うちの会社に乗り込んできた女がいるんだけど」
「……誰?」
急に彼の目付きが鋭くなった。
私が怒られているみたいで嫌なんだけど。
「名前なんていちいち覚えてない。
でも、社長秘書の娘だって言っていたはずだけど」
「社長秘書?ああ、吉井さんか」
呟くように名前を言った。
そうそう、そんな名前だった。
やっぱり、この人も知っている人か。
「で、その娘が何しに来たんだ?」