彼と愛のレベル上げ
引越し以来、色んな環境が変わった。

朔也さんの料理教室と月一回のお婆様とのお料理会。
それに加えて月に一度の主任とのデートと、仕事でも本社に出張にいったりと大忙しだった。

その料理教室の迎えにいつも来てくれている潤兄。
私が引っ越してからは車で来る事もなくていつも徒歩でうちまで送ってくれる。
近くなったから大丈夫って言ってもいつも迎えに来てくれるから、今日はお礼がてら潤兄を食事に誘ってみた。

お礼と言ってもきっと潤兄は桃の好きなところでいいって言うに決まってるんだけど。
でもまぁ、一応。


「えと、いつもお迎えありがとうございます」

「なんだよ、それ。桃がそんな風だと気持ち悪ぃ」

「ちょ、なにそれっ、こっちはきちんとお礼をと思って言ってるのに」

「はは。急にかしこまったりするから気持ち悪いんだよ。普通でいいよ普通で。大体俺が勝手に――」
「潤にぃが勝手に迎えに来てるって言うんでしょう?」

「わかってんじゃん。だったら…」
「でもっ、きちんとお礼が言いたかったの!」

「そっか。じゃあビール一杯。桃のおごりな?」


ビール一杯って。
そんなの奢った事にもなんないよ。
私がここの分出すって言ったってきっと潤兄は出させてくれないんだろうけど。
でも……



おなかも一杯になって時計を見ればもうすぐ10時。

時計を見ていた私に潤兄は、「そろそろ帰るか?」って聞いてきた。


「あーうん、そうだね…」


カバンの中からお財布を出そうとしたら携帯の着信ライトが見えた。
すぐに着歴を見れば、主任からの電話。

今日は金曜日だし、普段なら電話がない日。
だけど、主任が電話してくるぐらいだから、なんか急用?


「あ、電話があったみたい……」

「桃、先出てていいよ」


潤兄にそう言われて私は先に店の外に出て主任に折り返し電話をしはじめた。


呼び出し音が鳴る……


一回
二回
三回


あれ?出ない?
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