彼と愛のレベル上げ
帰る間際にアヤノさんが声をかけてきた。


「桃華ちゃん、これ」


細長い紙袋を突然渡されて戸惑う。


「あの?」

「この前堂地くんにご馳走になったお礼。」

「俺じゃなくてモモに?」


主任ったらまたそんな憎まれ口言って。


「そうよ、桃華ちゃんが前に気に入ってくれたモノ」

「なるほど、」

「それで、これは朔也から」


もう一つ渡された袋にはミネラルウォーターのボトル。


「はは、朔也はよくわかってますね」


そう言いながら私を見る主任。

ってことは、こっちの袋の中身はお酒ってことかな?


「朔也にもお礼言っておいてください」

「わかったわ」


アヤノさんは、「桃華ちゃん」と呼んで私の耳元に口を寄せると、


「これ甘いからって飲み過ぎちゃだめよ、寝ちゃったら堂地くんすねちゃうからね?」

「すね…って……」


私が寝ちゃうとすねちゃう?


「なんか悪い事ふきこんでないですよね?アヤノ?」

「そんな事ないわよ?桃華ちゃん大人っぽくなったわねって話してたの」


さっき耳元で言った事と全然違うことを言い出すアヤノさん。


「おや、アヤノもそう思いましたか」

「ええ、初めて会った頃から比べると随分と躾けられたのねーと思って?」


躾け?
大人っぽいと躾けってどう繋がるの?
立ち居振る舞いってこと?


「アヤノ、モモには通じてないみたいですよ?」

「あら、残念だわ」

「えと?」

「色気が出たとでも言えばわかるかしら?」


色気と躾けがやっと重なって私は顔を赤らめた。

ていうか、アヤノさん
今思いっきり昼間っ


「アヤノ、言葉選びはもう少し上手に」

「難しいわね、日本語は」

「はは、それじゃ帰るから」

「ありがとうございました」


綺麗にお辞儀をしたアヤノさんに見送られて車に乗った。


「モモ?顔がまだ赤いですよ?」

「アヤノさんが変な事言いだすからですっ」

「まぁでも、アヤノが言うのもわかりますけどね?」


でも、そんなの自分ではわからない。
いつまでたっても子供だしって思ったばかりだし


「あ、そういえばこの前望亜奈さんにもそんな事言われました…」

「やはりわかる人にはわかるんですね?躾け効果が」


だから、その躾けって言う言い方。
何とかなりませんか主任っ
< 126 / 240 >

この作品をシェア

pagetop