彼と愛のレベル上げ
威圧的な態度でじりじりと距離を詰めてから潤兄は、
「なんでいるんだよ……」
低い声で絞り出すように言う。
「え、と」
「桃が来れないから母さんが代わりに来たんだろ?」
「えと、そうなの?かな」
いやいや、そうじゃないはず。
蜜柑子おばさんが来るから、私は無理に来なくてもいいよって話だった。
だけど、そんなこと今ここにいる潤兄に言ってもきっと伝わらない。
それに……
「主任も帰ってきてるから一緒にご挨拶に……」
「はぁ?」
ピクリと片眉を上げて言う潤兄。
ま、まずい。
完璧怒ってる。でも、
「モモ?鍵開けられましたか?」
後ろから声を掛けられて振り返る。
仕事の時のような冷静な声で主任が続ける。
「相良さんまで、ご足労いただきありがとうございます」
そう言って小さく頭を下げる主任に対してすぐに潤兄も、
「……母が急にお邪魔して申し訳ない」
「いえ、ここは富貴子さんの家ですし、ともかく上がってください」
何このやり取り。
何この二人。
すっかりビジネスライクな態度に私は驚いて立ち尽くす。
「モモ?行きますよ?」
「え、あ、はい」
そしてすばやく繋がれた手に慌てて離そうとするけどそれは叶わない。
主任がしっかりと握りしめているから。
そこにちらりと視線をやり、私を見るとすぐに目をそらす潤兄。
恥ずかしい
居たたまれない
潤兄は小さく息を吐いた後、靴を脱ぎはじめた。
それを見た主任が「どうぞ、こちらへ」と言って中に促す。
もちろんその間も私の手は繋がれたまま。
逃げないから。
だから、
「ジュンさん、手は……」
小さな声で主任にだけ聞こえるように言うと、すぐに私の目を見て答えた。
「ダメです」
その時、主任がどんな気持ちでそれを言ったかなんてわからなくて。
私はため息をつくと
「もう、離して……」
今この瞬間手を離して欲しい。
それだけの気持ちで言ったのに。
私のその言葉に主任はピタリと動きを止めると、
「聞こえませんでしたか?ダメだと言ったでしょう?」
今度は空気がピリッとするようなそんな声で言い、私はその声ですっかり委縮してしまった。
こんな声を出す主任、初めてだ。
「なんでいるんだよ……」
低い声で絞り出すように言う。
「え、と」
「桃が来れないから母さんが代わりに来たんだろ?」
「えと、そうなの?かな」
いやいや、そうじゃないはず。
蜜柑子おばさんが来るから、私は無理に来なくてもいいよって話だった。
だけど、そんなこと今ここにいる潤兄に言ってもきっと伝わらない。
それに……
「主任も帰ってきてるから一緒にご挨拶に……」
「はぁ?」
ピクリと片眉を上げて言う潤兄。
ま、まずい。
完璧怒ってる。でも、
「モモ?鍵開けられましたか?」
後ろから声を掛けられて振り返る。
仕事の時のような冷静な声で主任が続ける。
「相良さんまで、ご足労いただきありがとうございます」
そう言って小さく頭を下げる主任に対してすぐに潤兄も、
「……母が急にお邪魔して申し訳ない」
「いえ、ここは富貴子さんの家ですし、ともかく上がってください」
何このやり取り。
何この二人。
すっかりビジネスライクな態度に私は驚いて立ち尽くす。
「モモ?行きますよ?」
「え、あ、はい」
そしてすばやく繋がれた手に慌てて離そうとするけどそれは叶わない。
主任がしっかりと握りしめているから。
そこにちらりと視線をやり、私を見るとすぐに目をそらす潤兄。
恥ずかしい
居たたまれない
潤兄は小さく息を吐いた後、靴を脱ぎはじめた。
それを見た主任が「どうぞ、こちらへ」と言って中に促す。
もちろんその間も私の手は繋がれたまま。
逃げないから。
だから、
「ジュンさん、手は……」
小さな声で主任にだけ聞こえるように言うと、すぐに私の目を見て答えた。
「ダメです」
その時、主任がどんな気持ちでそれを言ったかなんてわからなくて。
私はため息をつくと
「もう、離して……」
今この瞬間手を離して欲しい。
それだけの気持ちで言ったのに。
私のその言葉に主任はピタリと動きを止めると、
「聞こえませんでしたか?ダメだと言ったでしょう?」
今度は空気がピリッとするようなそんな声で言い、私はその声ですっかり委縮してしまった。
こんな声を出す主任、初めてだ。